『ヨーガの樹(The Tree of Yoga)』B.K.S.アイアンガー著より…3

『ヨガの樹』の比喩的表現– ヨガの成長プロセス

はじめに

ヨガを続けていると、「今、自分のヨガはどこに向かっているのだろう?」と考えることがあります。初心者の頃はポーズを取ることに一生懸命になりがちですが、練習を重ねるうちに、ヨガにはもっと深い側面があることに気づくようになります。

B.K.S.アイアンガーの『ヨガの樹』では、ヨガの成長プロセスを一本の樹に例えています。この比喩はとても分かりやすく、ヨガの各要素がどのように関連し、成長していくのかを理解するのに役立ちます。

今回は、「ヨガの樹」という考え方をもとに、ヨガがどのように成長し、どのように深まっていくのかについてお話しします。

「ヨガの樹」の構造

アイアンガーはヨガの成長を一本の樹(Tree)として表現しました。これは、ヨガの実践がどのように発展し、最終的にどこへ向かうのかを示しています。

🌱 根(ヤマ・ニヤマ) – ヨガの基盤となる倫理的な指針

ヨガの樹の「根」にあたるのは、ヤマ(禁戒)とニヤマ(勧戒)です。

これらは、ヨガの精神的な基盤を支える重要な教えであり、しっかりと根付かせることで、ヨガの成長が安定します。

• ヤマ(禁戒) – 他者との関係性を整える倫理(社会的)

1. アヒムサ(非暴力) – 自分や他人に優しくする

2. サティヤ(正直) – 正直に生きる

3. アスティヤ(不盗) – 必要以上に求めない

4. ブラフマチャリヤ(禁欲) – 執着を減らす

5. アパリグラハ(不貪) – 物質的な執着を手放す

• ニヤマ(勧戒) – 自分自身との関係性を整える習慣(個人的)

1. シャウチャ(清浄) – 身体と心を清潔に保つ

2. サントーシャ(知足) – ありのままを受け入れる

3. タパス(精進) – 継続的な努力をする

4. スワディヤーヤ(学習) – 自己を知り、学び続ける

5. イシュワラ・プラニダーナ(信愛) – 自然の流れを信じる

これらの根がしっかりと育つことで、ヨガの実践はより安定し、深みを増していきます。

🌿 幹(アーサナ) – ヨガの身体的な実践

樹の「幹」にあたるのが、私たちが日々練習しているアーサナ(ポーズ)です。

• 幹は樹の中心となり、根(ヤマ・ニヤマ)から栄養を吸収し、枝や葉へとエネルギーを運びます。

• アーサナを通じて体を整えることで、心の安定も得られ、ヨガの成長が進んでいきます。

ただし、アーサナだけに集中しすぎると、バランスが崩れます。根(ヤマ・ニヤマ)がしっかりしていなければ、幹(アーサナ)は十分に成長しません。

🍃 枝(プラーナーヤーマ) – 呼吸のコントロール

ヨガの樹が成長すると、枝が広がり始めます。この枝にあたるのがプラーナーヤーマ(呼吸法)です。

• 呼吸は、生命エネルギー(プラーナ)を体に巡らせる重要な要素。

• アーサナと呼吸を連動させることで、心の安定が深まる。

• プラーナーヤーマを実践することで、体内のエネルギーの流れを整え、より深い瞑想へと進む準備ができる。

呼吸は私たちの心の状態を映し出す鏡のようなものです。落ち着いた呼吸を意識することで、心の揺らぎも抑えられます。

🍂 葉(プラティヤハーラ) – 感覚の制御

葉は太陽の光を受けて、エネルギーを作り出します。同じように、プラティヤハーラ(感覚の制御)は、私たちの意識を外の刺激から内側へ向ける役割を果たします。

• 普段の生活では、視覚・聴覚・触覚などの感覚に振り回されやすい。

• プラティヤハーラを実践することで、外の情報に影響されず、心を落ち着かせることができる。

感覚を制御することで、より深い集中と瞑想に入る準備が整います。

🌸 花(ディヤーナ) – 瞑想

花は樹の成長の象徴であり、美しさを表します。

ヨガにおいて、瞑想(ディヤーナ)は、心が静まり、深い集中状態に入ることを意味します。

• ここまでの段階(根・幹・枝・葉)が整うことで、自然に瞑想へと導かれる。

• 瞑想を通じて、自分自身の内側にある静けさとつながる。

瞑想は単なる「座る行為」ではなく、日々のヨガの積み重ねの結果として生まれるものです。

🍎 実(サマーディ) – ヨガの最終的な目的

最後に、樹が完全に成熟し、果実が実る段階がサマーディ(悟り)です。

• これは、個人の意識が完全に調和し、心と体、魂が一体となる状態。

• 日常生活の中でも「平穏な心」を持ち続けることができるようになる。

ただし、サマーディはゴールではなく、ヨガの樹は常に成長し続けるものです。

まとめ

• 根(ヤマ・ニヤマ) → 倫理的な基盤を整える

• 幹(アーサナ) → 身体を鍛え、整える

• 枝(プラーナーヤーマ) → 呼吸をコントロールし、エネルギーを高める

• 葉(プラティヤハーラ) → 感覚を制御し、内側へ意識を向ける

• 花(ディヤーナ) → 瞑想を深め、心を静める

• 実(サマーディ) → 最終的な調和と悟り

このように、ヨガは一つの要素だけでなく、全体がバランスよく成長することで、深い気づきへとつながります。

次回は、『ヨガの樹』から学ぶ実践のヒントについてお話ししていきます!

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