『ヨガ・スートラ』第1章 第19節

「生まれつきの解脱者と、努力を通じて解脱に至る者」

サンスクリット原文

भवप्रत्ययो विदेहप्रकृतिलयानाम्।

Bhava-pratyayo videha-prakṛtilayānām.

和訳

「肉体を持たない存在(ヴィデーハ)や、自然の根本原理(プラクリティ)に融合した存在(プラクリティラヤ)は、生まれつきの解脱者である。」

第19節の概要

この節では、2つの特別な存在について述べられています。これらの存在は、瞑想や修行によらず、自然のままに「解脱(モークシャ)」の状態に達していると説明されます。

• ヴィデーハ(Videha)

物質的な肉体を超越し、純粋な意識の状態にある存在。

彼らは肉体的な制約を受けず、すでに物質世界を超えた解脱状態にあります。

• プラクリティラヤ(Prakṛtilaya)

自然の根本原理である「プラクリティ」と一体化した存在。

彼らは物質的な欲望や煩悩を持たず、自然の根本要素に吸収されているため、苦しみから解放されています。

ヴィデーハとプラクリティラヤの違い

項目 ヴィデーハ(Videha) プラクリティラヤ(Prakṛtilaya)

意味 肉体を持たない存在 プラクリティに融合した存在

特徴 純粋な意識の状態 物質的な欲望を超越

解脱の方法 生まれつきの解脱者 自然の根本要素に吸収されることで解脱

この節が示す教え

パタンジャリはここで、「解脱に至る道にはさまざまなタイプがある」ことを示しています。

1. 生まれつき解脱している存在

• ヴィデーハやプラクリティラヤのように、特別な魂は修行の必要なく解脱に至っています。

• しかし、これらは例外的な存在であり、大多数の人は努力によってその境地を目指します。

2. 努力を必要とする一般の修行者

• 私たち普通の人々は、瞑想、プラーナーヤーマ、アサナ、倫理的実践(ヤマ・ニヤマ)を通じて心を浄化し、解脱の境地に至る道を歩みます。

この節の現代的な解釈

この節は、**「人それぞれ異なる道がある」**という多様性を受け入れるメッセージとも読めます。

現代社会においても、私たちはそれぞれ異なる背景、価値観、人生経験を持っています。それを理解し、自分に合ったペースで内なる成長を目指すことが大切です。

実生活への応用

• 他人と自分を比較するのではなく、自分の内なる旅に集中する。

• 短期間で成果を求めるのではなく、コツコツと積み重ねる修行を大切にする。

まとめ

第19節は、特別な存在と一般の修行者の違いを説明しながら、「ヨガの道は一人ひとり異なる」ということを示しています。すべての人が同じ方法で悟りに達するわけではありません。重要なのは、自分のペースで努力し続けることです。

「自分の道を信じ、歩み続けよう。」